取引所コインチェックがGOXにより盗難された利用者の5億2300万XEMに対して現金を補償すると発表しました。
さて気が早いですが、この補償に対して税金は課税されるでしょうか?
通達では仮想通貨を日本円に換金した場合は売却益に課税するとされています。
しかし今回は利用者が仮想通貨を換金したのではなく、取引所が利用者の仮想通貨をGOXにより失ったことに対して利用者に補償金として現金を払うというものです。
通達には仮想通貨がGOXにより失われた場合や、取引所がGOXの補償金を支払った場合の取り扱いが示されていません。
鍵になるのは次のいずれかの条文でしょう。
所得税法施行令30条では資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金には課税しないとされています。
この条文が適用されると、利用者はGOX直前に保有していたXEMをすべて失い、取引所から88.549円×保有数の見舞金を受け取ることになります。この見舞金には税金が課されません。代わりに今後はその失ったXEMの取得価額を雑所得の必要経費に入れることはできません。
一方所得税法94条では雑所得を生ずべき業務を行なう者が、棚卸資産につき損失を受けたことにより取得する損害賠償金などで、その損失の金額をこえる金額に相当する部分は雑所得の収入金額とするとされています。
この条文が適用されると、利用者はGOX直前に保有していたXEMをすべて失い、代わりに取引所から88.549円×保有数の損害賠償金などを受け取ることになります。この損害賠償金は雑所得の収入金額に入り、GOX直前に保有していたXEMの取得価額が必要経費に入ります。要は売却した場合の売却益に課税されるのと同じですね。もちろん取得価額の単価が88.549円より高ければ損失ですので課税されません。仮想通貨の取得価額については通達の4を参照。
さて適用されるのはどちらの条文でしょうか?
僕は94条により税金が課されると思います。
コインチェックでXEMを保有していた利用者にとっては強制利確されるわ単価は加重平均されてGOX騒動前より下がってるわで災難しかないですね。そもそもそれ以前に補償は現実にされるのか…
私も一般的には94条による課税かと思いますね。
根拠と考察は以下の通り。
環境権侵害に対する補償金名義で支払われた金員について争われた大阪地判昭和 54 年 5 月 31 日判時 945 号 86 頁(大阪高判昭和 55 年 2 月 29 日税
資 110 号 502 頁、最 1 小判昭和 56 年 4 月 23 日税資 117 号 217 頁)は、
「所得税法九条一項二一号、同法施行令三〇条が損害賠償金、見舞金及びこれらに類するものを非課税としたわけは、これらの金員が受領者の心身、財産に受けた損害を補填する性格のものであって、原則的には受領者である納税者に利益をもたらさないからである」としている。
この判断に鑑みるに取得価額単価が88.549円よりも下の価額で購入した者に関し、所得税法施行令30条による措置を行うとすると、本来課税すべき部分が消滅するため、その消滅部分を利益とみなすことができます。これは所得税法施行令30条の意に反すものと考えられます。
従って、本来納税者の負担すべき課税負担に近い94条による課税になるでしょう。
以上が私の考えですが、仮想通貨は現金による補償?はその性格に合わない気がします。
本来的な「補償」という観点から考えればNEM自体が返還されるべきですが、現実的にはそれは難しいため、止む無しな感じですかね。
今後の世間の反応が気になります。
やはりコインチェックの損害賠償金の利益分は課税対象になりそうですね。今後どのように正式発表されていくかは注目です。
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